勇者神想
マグナセイバー
Mission 6 『閃く稲妻 煌めく氷』








『え〜、現場の佐藤さ〜ん。』
『はい。先週土曜未明に星鈴せいりん山で起きた爆発ですが、報道関係者は立ち入り禁止になっており未だその全容は不明です。山腹付近に未だ煙が見えるため火の手が上がっている可能性もあり、周辺の住民は不安を隠せない様子です。』
『封鎖の理由は?』
『そちらもまだ明らかにされていません。一説ではこの付近に謎のテロ集団が潜んでいるという噂も―』



くだらない。
そう思って俺はTVを消した。
朝から無駄な時間を過ごした気がする。おかげで微妙にイライラしだした。全くどうしてくれる。これから学校だというのに、気分が台無しだ。

神鳴かみな、そろそろ時間じゃないの?」

台所に立つ母が心配そうに見つめているのでいい加減出ることにするか。
今日は6年生が揃って列車博物館に見学に行く日だ。こんな時期にこういうイベントを組む学校側もどうかと思うし、正直あまり気乗りはしないがサボるわけにもいかないしな。
普段通りに靴を履いて玄関をでる。むしろ鬱陶しいと思ってしまうくらい朝日がまぶしい。
もう何年も通い続けている道を通って見慣れた学校へと急ぐ。
正直言うとかったるい。
何より、アイツと顔を合わせなくてはいけないから。





教室へ着くといつも通りアイツが浮かれて………はいなかった。珍しいこともあるもんだ。そばにいる星野も不安そうにしている。
今の俺の指定席である窓際の最後尾の席に座り、ぼんやりと外の様子を眺める。まぁ、どうせ大したことなんて起きはしないだろう。俺みたいなごく平凡な人間のまわりなんて、それ相応の日常しか与えられないのが世の常だ。

「みんな席に着け〜」

程なくして担任が来た。体育担当で運動は全般的に得意、一応女だということをとりあえず付け加えておく。

「みんな、家に帰るまでが〜………って、これは帰りに言う言葉かぁ。」

………それと、何処か思考がずれていることも。天然なのだろうか?



お決まりのHRが終わり、学校そばに止めてあるバスにクラスごとに乗り込む。教室と同じように窓際の席に座る。

「げっ。」

妙なうめき声に目をやると、アイツが俺とその隣の席を交互に見つめて顔を強張らせていた。何もいうな、俺だって嫌なんだ。クジで決めさえしなければ誰が好き好んで隣に座らせるモノか。
……こういう時はあの先生も融通が利かないのが難点なんだよな。



移動中のバスの中、俺は窓枠に頬杖をついて不機嫌そうなツラをしていた。

「………」

アイツも俺とは逆の向きを向いて黙っている。
バスの中はテンションの高い連中のカラオケボックスと化していた。まだ行きだというのに元気なことだ。
俺は別に興味もないので流れていく風景を静かに眺めている。
と、不意に前の座席のヤツがこちらを振り返る。手に持ったマイクをこちらに差し出してきた。

「ねぇ、二人も何か歌いなよ!」

茶色のポニーテールに赤いリボン……星野か。

「俺はいい。隣でむくれてるヤツに歌わせてやってくれ。」
「何だよ、俺に押しつけるなよ!」
「別に、ただ歌いたくないだけだ。」

コイツとはまともに付き合っても疲れるだけだ。放っておけばいい。さて、俺はおとなしく景色でも眺めているとするか……



“……が…るじ…”



ふぅ、どうやら今日は体調が悪いらしい。幻聴が聞こえ始めた。途切れがちな上に声が小さくて何を言っているのかは聞こえやしない。隣で叫くヤツのせいもあって余計に聞き取りづらいし。

「………ふぅ。」

仕方なく風景観賞から仮眠へと行動を移行する。きっと次に目を覚ます時までには何事もなくなっているだろう。
根拠も無しにそう確信しながら俺は軽い微睡みへと落ちていった。




瞼をくすぐる日差しに目を開ける。隣のアイツのふくれ面は相変わらずで、まわりの様子から俺はまだ目的の場所へ着いていないことを確認した。寝る直前まで叫いていたコイツも今では諦めたのかおとなしく座っている。

「そろそろ付くわよ〜」

明らかな寝起きの声で担任が皆に声をかける。どうやら俺以外にも寝ていたヤツがいたようで数人のあくびの声が聞こえた。
各々荷物を持つとバスを降りる。まぁ、荷物といってもロクにないんだけどな。



その足で案内されたのは昔電車の車庫だったらしい場所を改装して作った展示スペース。基本的にかなり広い、というかここからだと向こう側の壁が見えない。そしてその中には「どうやったらこれだけの車両が入るのか?」といいたくなるくらい数多くの特急、及び新幹線が収められていた。どれもこれも今では何処にも走っていないまさにレアものばかりである。
昔ここに忍び込んで車両を盗もうとした鉄道マニアが居たそうだが、一体そいつはどうやってここから運び出すつもりだったのだろうか? ちなみに言っておくと各車両をおいている線路は現在使われている線路からは完全に切り離されているうえに、動力部はどの列車も撤去しているらしいので運転して運び出すのは不可能である。




とりあえず館内は各自自由に見て回ってよいそうなので入り口に近いモノから順に見て回ることにした。

「『300系のぞみ』……コレが『つばさ』で……『E4』……ふぅん、これが『アレ』の元かぁ……」

ぶらぶらと回りつつも各車両の説明はしっかりと読む。いつの製造か、どれだけの間走っていたか、デザインや名前の由来など。こういう事をチェックをしておけば、後で書かされるであろう感想文のネタにはなるからだ。 ……まぁ、他にも多少個人的な理由があるのだが。
ひとまずめぼしいデータはメモしておくか。



概要を5つほどメモし終え、次のターゲットを探していた時、ふとあの二人を見かけた。アイツと星野だ。せっかくの見学だというのに壁にもたれて何をやってるんだ?
見たところ暗い顔で何かを話し合っているようだ。立ち聞きはあまり好ましくないとは思うが、アイツが珍しく落ち込んでいる理由は興味がある。少し様子を見ていこう。


「……あの人……人間なのかなぁ?」
「ンなワケ無いさ。マグナでも勝てなかったんだ。人間なハズがねぇよ。」
「でも…どう見ても人間だったよ?!」
「アイツの強さは俺が誰よりも知ってる……アイツは人間なんかじゃねぇ!」


………なんかのゲームの話だろうか?
何のことやらサッパリわからん。……とにかく見学の続きに戻るか。




ほぼ全ての車両を見終え、最後に向かい合わせで展示されている2両の新幹線を見上げた。

「これが……九州新幹線『つばめ』で……こっちが北陸新幹線『はやて』か……」

すると、何故だか分からないが妙にそれらが気になっている自分に気がついた。理由は自分でも分からない。何の変哲もないただの新幹線なのに、何となく惹かれてしまっていた。もうやることもなくなっていたせいか、俺はただ呆然と2つの鉄の塊を見上げていた。
と、遠くでまた誰かが呼んでいるような気がした。
まわりを見渡すと誰もいる気配はない。 ……いや、一人だけいた。こちらへ走ってくる。

「もう、ダメじゃないの氷室くん! もうお昼の時間よ!」

眉をつり上げて声を上げているのは見飽きた顔の担任である。どうやら昼の休憩時間に入ってしまっていたようだ。担任に手を引かれつつ肩越しにさっきの2両を見やる。だが、さっきまでの興味は嘘のようにひいていた。




昼食もすませ、他の生徒たちは見学へと戻っていった。
俺も一足遅れで食べ終えると席を立つ。といっても既に見るものは見てしまった後なので何もすることはないのだが。
仕方ない、一人で屋外をぶらつくことにしよう。



博物館の建物のまわりをゆっくりと回っていると裏手に小高い丘を見つけた。その頂上付近まで登ると風が穏やかに吹いてきた。こういうところでまったりと昼寝をしてみたいものだ。

「あらぁ? 先客が居たようねぇ。」

突然の背後からの超えに慌てて振り返る。その先にいたのは妙なドレスに身を包んだ女だった。

「あーあ、この辺なら見つからないかと思ったんだけどなぁ。人間って意外なところにもいるモノね。」

大袈裟に肩をすくめるような動きで溜息をつく女。その様子が何となく俺の中の何かに触れた。

「あんた、何モンだ?」
「何も出来ずに死ぬことしかできないヤツに教えてあげる義理はないわ。」

何となく腹の底から形容しがたいものが登ってくるような感覚がある。

「……質問に答えろ。」
「今何か言ったかしら?」

それが合図。

「オイ、人が質問してるんだから真面目に答えやがれ。」

自分でも顔が怒りに歪んでいるのを実感できる。

「人間風情がこの私に命令するの? フフ、面白いわね。」

対する女も動じた様子は微塵もない。

「人の話聞いてんのかよ、オバサン。」
「………アナタ、本当に面白いわね。いいわ、今のアナタに相応しい死に方を、私が選んであげる。」

女は唇の端をより一層吊り上げると、胸元に右手を差し入れた。俺の前に再度姿を見せたその手には、不気味な黒い球が浮かんでいる。

「んー、あの辺がちょうどイイかしら。」

周囲を見回した女は俺から見て左の方角にある小さな建物を見ていった。
すると手のひらの球がそちらの方角へ向けてまるで引かれるように飛んでいった。だが黒い球はすぐに戻ってくる。女はそれを右手を挙げるだけで受け取り、そして続けざまにテニスのサービスのようなフォームで頭上へ放った。投げあげられたそれは、一瞬の間の後に変化を始める。
まず手足のようなモノが生えた。手のひらサイズのあの質量のどこから出てきたのかはいささか疑問だ。どことなく人間にも近いようだが表面は鱗で覆われている。
そして続いて身体。よく見るまでもなく『魚』だった。魚介類にはあまり詳しくない俺だが、それが世間で『翻車魚マンボウ』と呼ばれる魚だと言うことはすぐに分かった。
……あえて一言で言わせてもらおう。




『気色悪い。』




昔のアニメか漫画でこんなカンジのキャラが居たような気がする。唯一違うことと言えば、そのキャラクターはあくまで成人男性の身長より多少小さい程度の大きさで、決してこんな特撮じみた異常なデカさではなかった、と言うことである。
その上嫌になるくらいリアルで、出来れば俺だって直視はしたくない。と言っても現実の出来事なのだからリアルで当然なのだが。

「………」
「フフフ……私のかわいい邪心獣に言葉もないようね。」

その魚じみた怪物をただ見上げている俺を見て、女は何かを勘違いしたらしい。

「……か、かわいい………?」

俺は呆然と女の言葉を繰り返す。

「そうよ、文句あるの?」
「文句……というか、コレを『かわいい』と言えるあんたの感性を疑いたい…」

ついうっかり本音が漏れる。俺はその一言を口にしたことを瞬時に後悔した。

「……予定は変更ね。今すぐ楽にしてあげるわ!」

どうやら相手は馬鹿にされたことに気付いたらしい。怒りをあらわにすぐ傍の魚、もとい怪物に指示を飛ばした。怪物も女の命令に従順で、ゆっくりとした足取りで俺の方へ近づいてくる。どうやら踏みつぶす気らしい。
だが、この時俺は既に腰を抜かしていた。通常なら『間抜け』としか形容しようのないこの怪物を前にして、自分のモノではないかのように脚が動かない。これほど自分が情けないと思った瞬間は未だかつて無かった。
ヤツがあと一歩踏み出せば俺はあの気味の悪そうな足の裏に潰される。
死にたくない。こんなところで終わりたくない。終わらせたくない……!

ヤツの脚が俺の頭上にゆっくりと降ろされていく。

「うわぁぁぁぁぁっっっっ!!!」




次に目を開けた時、まず目に入ったのは目の前に浮かぶ親父の形見のタイピンだった。何処で見つけたのかは知らないが、海外の土産物屋で見つけたと聞いた。黄色い石が填め込まれた古びた一品モノらしい銀細工。ただそれだけ。

なのに、あたりを見ると黄色い透明な半球が俺を守るように広がっている。その中心は親父のタイピンに填った石。いつもはただの半透明の石だったのに、今は光があふれ出している。

『おい、主、聞こえてるか?』

あまつさえ声さえ響いてくるときた。
コレはいったいどんな夢だ? しかし頬をつねっても、頭に拳骨かましてもいっこうに醒める気配もない。

『寝惚けてるのか、主? さすがだな。だが、むしろそのくらいじゃないとこっちも困る。』

よく見ると例の魚の化け物は半球の防壁の上に足を置いたままの格好で止まっている。いや、恐らくヤツなりに踏みつぶそうと頑張っているのだろう。頭の上で叫いているらしいあの女の姿も見える。
とりあえず落ち着いてきたので、さっきからベラベラと喋っている親父のタイピンに問いかけてみた。

「お前……何者だ?」
『俺か? 俺はライジング、雷を司る精霊だ。 ……っと、このままじゃ何かと不便だな。ちょっと待っててくれ。』

そういうと、タイピンの黄色い石から光だけが抜け出し、さっきまで俺がいた列車博物館の方へ飛んでいった。と、その直後、壁を突き破って九州新幹線・つばめが『飛んできた』。

『ヘイお待ち!』

そして何故か先程『ライジング』と名乗った声が聞こえる。

『コレで思う存分戦えるぜ!! いくぜっ!』

そういうと目の前の新幹線が飛び上がる。後部約半分が後ろに伸びて縦に二つに割れる。フロントノーズも縦に割れ、左右に平行移動し、更には人の腕らしきものが後方へ伸びる。最後に頭が飛び出し、完全な人型に『変形』した。

「雷の精霊・ライジング様参上ォ!! オラオラ、どっからでもかかって来な!」

着地と同時に脚部側面から大小の2刀を取り出したライジングは、威勢良く魚っぽい怪物に手招きしてみせる。
怪物の方も頭に来たらしく、馬鹿正直に正面から突っ込んできた。

「へっ、そう来なくちゃなぁ!!」

相手の突進を刀を交差させて受け止める。だが、そのパワーは想像以上で、若干だがライジングが押されている。

「何やってんだよ! しっかりしろよ!」

俺もいつの間にか必死になってライジングを応援していた。

「分かってるぜ、主…… ったく、こんな時にアイツは何やってやがる。くぉらぁ、フリジング、何処で寝てやがるんだァ!! お前にも、主の声が聞こえてるんだろうが! とっとと起きて手ェ貸しやがれェ!!!」

ライジングはいきなり怒声を飛ばす。一体誰に向けたものかはわからない。だが、『フリジング』と言う名から察するに、きっとライジングの仲間だろう。
と、突如上空を青白い光が横切った。光は何かを探すように数度旋回すると、またもさっきの博物館へと飛んでいった。何となくイヤな予感がする。いや、俺の予想通りなら恐らく事態は好転しているのだと思うが。
案の定建物から新幹線が飛んでくる。そして人型に変形した。

「主殿、遅れて申し訳ありません。」

登場と共に二人目のロボットは謝罪した。一人目とはえらい違いだ。

「こら、フリジング! 遊んでないでさっさと手伝え!!」

すぐ傍で闘っているのに半ば無視されていたライジングが吼える。

「『遊んでいる』とは失敬な。主へのお目通りと、遅れたことへの謝罪をしていたのだ。それに、手を貸すのは言うまでも無かろう。我等は『双子』なのだからな!」

言葉尻を言い終える前に魚型怪物の横っ腹に脚部から取り出した長い棒で突き上げる。

「双子……? ロボットの……?」
「我等は『精霊』、機械ではありません。詳しい説明はまた後ほどに。」

「あ、お前、遅れてきといて美味しいとこばっか持ってくな!」

二人を見ていての正直な感想としては『凸凹コンビ』だと言うことだ。

「おっと、やっこさんも案外しぶてぇな。」
「ふむ、手を抜いたつもりはなかったが、少々狙いが甘かったか。」
「って、オイ!」

冷静に言うフリジングにライジングが裏手でツッコミを入れる。
……前言撤回。ケンカばかりに見えるが、『双子』なだけにどうやら息は合ってるらしい。

「……んじゃ、久々に派手に暴れるか。」
「……そうだな、この身体の慣らしも兼ねてな。」

お互いに笑みを浮かべると、二人は左右対称の構えを取る。ライジングは双剣を、フリジングは長棍を、それぞれ地面と並行に揃える。

「「いくぞっ!!」」

雄々しい叫びと共に、まずライジングが敵に向けて一直線にはしる。

「はっ!!」

そしてフリジングがビリヤードのショットのごとく棍を地面に突きこむ。すると地面が赤絨毯よろしく凍り、『道』が作られる。ライジングはその上に乗り、滑走で勢いをつけながらも武器に電撃を迸らせる。

「喰らいやがれぇぇぇっ!!!」

さっき氷の道を造った時に、相手の脚もまとめて凍らせておいたらしく、敵も身動きが取れないらしい。ライジングは勢いに任せて豪快に剣をX字に振りぬいた。

「「氷雷牙ひょうらいが!!」」

魚型怪物は斬撃と電撃の両方でダメージを喰らい地に伏した。
その光景に俺は心を奪われていた。さっきまでは文句を言ったりしあっていた二人の、そのコンビネーションのあまりの美しさに。

「どうだい主? 俺たちの強さに感動したろう?」
「あ、あぁ……」
「我等の戦いは始まったばかりだ。先はまだ長い。」
「あぁ…」

俺は生返事を返すほか無かった。事態が飲み込めない上にわけのわからないロボット2体が俺を『主』と呼ぶからだ。

「な、なんだこいつら……」

人が混乱してるって時に、またイヤなヤツが現れやがる。
振り向いた先にはアイツが……いるにはいた。だが……『車の運転席から降りてきている』のは何故だろうか。

『彼らもまた精霊だ。雷と氷のようだな。』

車が喋ってる……と言うことはコイツもアレか。

「?! まだ動いてるよ?!」

助手席から降りた星野が指を差した先には、さっきライジング達が倒したはずの怪物がいた。

「お前、止め刺さなかったのかよ! ったく、使えねぇな……いくぞ、マグナ!」
『了解!!』

そういってアイツは赤い車が変形したロボットと共にあの化け物に向かっていった。……馬鹿にされたことには頭にきたが、何よりアイツもロボットといっしょに闘っていることに驚かされた。




結局あの化け物は、アイツの連れていた赤いロボットがどっからか出してきたメカと合体したあと、必殺技ブチかまされて消滅した。

「いやぁ、面目ねぇ。まさかあの野郎が、まだ息があったとは……」

頭をかきつつライジングが謝罪する。

「どうやら、認識を改める必要がありそうですね。」

フリジングは何やら考え込んでいる。
星野や……アイツもこっちを見ている。何となく複雑そうな目をしてるな。

「ほら、勇斗くん……」
「あ、おい…… え〜っと、何つーか……お前も選ばれたんだな。」

困った顔でこっちを見るな。それと、こっちはまだ何も状況が飲み込めてないんだからもう少し分かるように言え。

「と……とりあえず、これからはよろしく頼―」
「断る。」

俺はハッキリそう言ってやった。正直あんまり宜しくしたくないしな。

「……なんだと?」
「…聞こえなかったか? ならもっと分かりやすく言ってやろうか。こいつらの『主』として戦うのは了承するが、お前と仲良く、ってのだけは死・ん・で・も・ゴメンだ!」
「テメェ、人が下手に出てりゃつけ上がりやがって……いっぺん白黒ハッキリつけた方がイイみたいだな!」
「やれるモンならな!!」

そのあと俺たちは、事態に気付いた教師連中が来て止めにはいるまで、とっくみあいのケンカを繰り広げた。





………まぁ、そんなこんなで俺の小学生最後の社会見学は終わりを告げた。ちなみにお約束の感想文の評価は、俺は満点、アイツが60点だった。ざまぁみろ。



To be continued