とっさに翡翠を抱きしめ、周囲をくまなく伺う。 「なんだ!?」 これはいったいどういうことなのか、陽平の見ている前でジェットコースターのレールが生き物のように動き出している。 いや、ジェットコースターだけではない。ほかの大型アトラクションさえも取り込み、徐々にそれは形作っていく。 「こいつは……忍邪兵かっ!!」 まるで陽平の叫びに応えるかのようにゆっくりと起きあがるそれは、まるで怪獣映画のようにゆっくりと足を踏み出した。 (なんだ。なにかを探してやがるのか?) こちらを襲ってくる様子はない。だが、どうも目的をもって破壊活動を行っているようにも見える。 「俺はあれを倒しにいく! 翡翠は観覧車が動いたら光海たちと逃げろ!!」 内側から難なく扉を開けると、強く風が吹き付ける中、陽平は影衣を身にまとう。 シャドウフウガは翡翠の返事も聞かずに飛び降りると、手にした獣王式フウガクナイを発動させる。 「風雅流忍巨兵之術っ!!」 陽平が落下するよりも早く現れた獣王は、陽平の体を口でキャッチすると、そのまま忍邪兵めがけて走り出した。 「陽平、奴等の目的はいったい!?」 「わからねぇ! けど大事なデート邪魔されて黙ってられるかよ!!」 獣王に併走するように現れるクリムゾンフウガを伺い、陽平は再び獣王式フウガクナイを構える。 「風雅流奥義之壱、三位一体っ!!!」 風雅之巻が紐解かれ、紅い光の中、シャドウフウガ、獣王クロス、忍獣クリムゾンフウガがひとつになる。 「獣王式忍者合体っ、クロスッフウガァァッ!!!!」 まるで怪獣と対峙するかのように立ちふさがる獣王に、忍邪兵が長い首を持ち上げる。 首長竜のようにも見える忍邪兵は、背中を震わせるとミサイルのようにコーヒーカップを射出する。 「おいおい…」 襲いかかるコーヒーカップを避けるのは容易い。だが、陽平は見た。見えなければ気にせずに戦えた。見えなければ知らなかったで済ませたはずだ。しかし…、 「あの野郎っ、人間も一緒に取り込みやがったのか!?」 人が乗っているのでは撃ち落とすことも避けることもできない。 苛立たしく舌打ちすると、陽平はそのすべてを捕獲にまわりだした。 キャッチした瞬間に爆発したりはしないだろうかと考えもしたが、もしそうなったときは作戦を変更するだけだ。 (俺は…、聖人君子じゃない。忍者だ!) 主のためには時として、犠牲さえも厭わずに戦う非情の戦士。それが忍者だ。 救える命は救いたい。だが、自分が見ず知らずの人のために泣いてやれるとも思っていない。 凄まじい動体視力でコーヒーカップを見切り、ひとつ、またひとつと受け止めていく。 そうしてすべての人質を回収し終えたときには、既に忍邪兵は移動を始めていた。 やはりなにかを探しているようにしか見えない姿に、陽平はもしやと周囲を伺う。 どうやら遊園地を平らにするつもりらしく、あらゆる乗り物を吸収拡大していく忍邪兵に、獣王は腰から斬影刀を抜き放つ。 「このままでは姫が危険だ。陽平、やつを斬るんだ!」 「あ…、ああ」 曖昧に頷くも、陽平は忍邪兵に対して刀を振り上げることができなかった。 頭で理解はしていても、身体はそういうわけにはいかない。そして心も。 だが、ゆっくりと観覧車の方に首をもたげる忍邪兵に、陽平は迷うことなく飛び出した。 「たとえ俺の心を殺したって翡翠には指一本触れさせねぇ!!」 振り上げた斬影刀を忍邪兵の背中に突き立て、そのまま横へと切り裂いた。 飛び散る返り血に痛む胸を堪え、裂岩で足を切り落とす。 まるで戦う気のない忍邪兵に苛立ちながら、陽平は背後を振り返る。 どうやら観覧車はあのまま動いていないらしく、頂上のゴンドラには翡翠の姿がある。 その表情はとても哀しそうで…。 「……くそっ!」 吐き捨てるように呟いた瞬間、背後の忍邪兵がジェットコースターの首と尾を伸ばし、獣王の身体を絡めとっていく。 凄まじい力で引き寄せられ、まるで杭打ち機のようなフリーフォールが右肩に突き立てられる。 「があああああっ!!!」 人の乗るゴンドラを支点に、棒の方を何度も打ち込まれ、陽平の顔が苦悶に歪む。 「やろぉ…、調子に乗りやがって!」 だが、振り解こうにもコースターのレールにまで人がいる始末。力任せに引きちぎれば人質が大勢死ぬことになる。 (命を奪うことに躊躇する気はない。だけど、翡翠を悲しませないようにするにゃどうすりゃいいんだよ!!) このままでは獣王の右腕がもげ落ちるのでは。そんな気配さえし始めた陽平に、さらに追い打ちをかけるように忍邪兵の巨体が動き出す。 どうやらクロスフウガごと観覧車を押し潰すつもりらしく、どう踏ん張ろうともその前進が止まることはない。 「てぇめぇ!! 止まりやがれっ!!!」 翼から無理矢理裂岩を切り離し、忍邪兵をズタズタに引き裂いた瞬間に脱出すると、アンカーのように伸ばした獣爪をぶつけて下がらせる。 まただ。また人の死に心が悲鳴を上げている。 「随分と苦しそうじゃないか、獣王」 突然の声に陽平の目が鋭く睨む。 電灯の上に佇む女性の姿。違和感だらけだというのに、その姿はどこか妖しげな美しさを醸し出している。 特に印象的なのは、髪飾りについた大きな鈴だ。 「あ、アンタは……いったい!?」 「私かい? …キミの敵さ」 そう言った瞬間、女性──蘭丸の手に現れた血のように真っ赤な薙刀の生み出した衝撃波は風を切り、自分の数十倍はあろう獣王の巨体をふっ飛ばす。 「な、そんなばかなっ!?」 「脆いね。それで最強とは笑わせる」 観覧車によりかかるように驚く獣王を見下す瞳に、陽平が怒りを露わにする。 「舐めるなっ!!」 「笑いたくもなる。過去において、信長様を傷つけたというのもほんの偶然」 蘭丸の言葉に、陽平は迷わず飛び出した。 蘭丸めがけて手にした斬影刀を一閃するが、刃が捉えるよりも早くその姿はかき消え、次の瞬間には獣王から離れた電灯の上に現れている。 「そういえばこの時代でこうして会うのは初めてだね、獣王。改めて、森 蘭丸です」 恭しく頭を下げる蘭丸に合わせて、髪飾りの鈴がちりん、と鳴り響く。 それにしても森 蘭丸とは。陽平の額に玉のような汗が浮かぶ。 陽平とてその名は知っている。織田信長の懐刀であり、男でありながら女性のような美貌を備えていたという。 実物を目の当たりにした陽平でも、確かに美しい女性に見える。 だが、陽平とてそれに惑わされるような愚か者ではない。 相手は生身て忍巨兵を吹っ飛ばすほどの化け物なのだ。油断していたら瞬く間に首を飛ばされかねない。 「くそっ、こんなときに!」 傍にいるはずの光海が、友人たちと観覧車の中にいるために、森王を召喚することができないことが口惜しい。 それは当の光海も同じらしく、落ち着きなく左手の腕輪と獣王とを視線が行き来する。 「獣王よ、この施設が忍邪兵によって平らになる様、指をくわえて見てるがいい」 蘭丸の言葉に、忍邪兵が動きをより一層激しくする。 「やっ、やめろっ!!」 「ならば止めてみるといい。人間たちを殺してね」 陽平が躊躇しているのをいいことに、完全に調子づかせている。 だが、なんとかしようにも陽平には中の人質を助け、尚且つ忍邪兵を倒すなどといった離れ業を行うことはできない。 (クロスフウガの武器でそんな細かな攻撃を加えられるものはねぇ。どうする。どうすりゃいい…) だが、迷いの中、斬影刀を強く握りしめ、より多くの罪なき命を諦める決断に差し掛かった頃、再びあの視線が陽平に向けられる。 いち早くそれに気づいた陽平は、藁にも縋る気持ちでその視線の主を探す。 しかし、陽平が見つけるよりも早く、それは獣王の前に現れた。 遊園地のアスファルトを割り、土台の土を引き裂いて現れたそれに、光海と咲が声にならない悲鳴をあげる。 「まったく、見てられないね、獣王」 目の前の大きな蜘蛛から聞こえる女性の声に、陽平はおもわず目を丸くする。 「お、女の忍巨兵? しかも蜘蛛型って…」 「女で蜘蛛だとキミに不都合が?」 巨大な蜘蛛が少しキツい感じで言葉をかけるのはなかなかにシュールだ。 それを察したか、それは8本もの足で器用に跳躍すると、前転して人型に姿を変える。 腕を組み、獣王に並び立つ黒い姿に、陽平は関心したように声を漏らす。 「美人……だな」 人型機動兵器に美人とかあるのかはともかく、他の忍巨兵と違い確実に女性型なのは確かだ。 すかさず口元にマスクを装着する忍巨兵に、まさか照れ隠しじゃなかろうな、などと勘ぐりつつ、未だに遊園地を根こそぎ平らにしている忍邪兵へと目を向ける。 「とにかく、えっと……」 「闇王【あんおう】…、闇王モウガだよ」 「ああ。じゃ、さっそく手ぇ貸してもらうぜモウガ!」 陽平の言葉に頷く闇王は、その前に、と蘭丸を指さした。 刹那、蘭丸の身体はバラバラに切り刻まれ、見ているこちらの背筋が凍り付きそうな笑みを浮かべる。 「天藍【てんらん】の仇だよ…」 「…………モウガ、いいか?」 「ああ。武装して一気に終わらせてくれ。巫女も忍びもない今のボクに、長時間の戦闘は不可能だ」 そういうと、再び蜘蛛に姿を変え、吐き出した糸で獣王の左腕を絡め取る。 陽平が驚くよりも早く巨大な手に変形した闇王は、ゴムかなにかで引っ張られるかのように勢い良く獣王の左腕に装着される。 その反動で回転しながらも、左手の武器を瞬時に察知した陽平は、全身から失せていく気力に歯を立て、左手を突き出すように身構えた。 「「闇王式爪刃合体っ、クロスフウガ・ゴッドハンドッ!!!!」」 本来、巫女が負担する力さえも気力で補い、震える膝を抑えつける。 「へっ、こいつはすげぇぜ!」 「獣王の忍び、奴の体内コアを露出する!」 闇王の言葉に左手を振り上げ、指先から飛び出した極めて細い糸を忍邪兵に伸ばし絡め取る。 その瞬間、忍邪兵の身体はバラバラに分解され、おそらく本体なのだろう心臓のよつに脈打つコアが剥き出しにされる。 しかもバラバラにしながらも人質を傷つけずに切断する辺り、刀では到底真似できない芸当だ。 「斬糸の武装…。とんでもねぇ威力だな」 「関心している暇はない」 「あいよ! それじゃ決めるぜっ!!」 再び伸ばされた糸は忍邪兵のコアを絡め取ると、蜘蛛に捕獲された獲物のように繭状に拘束する。 「捕獲完了!」 「くぅらいやがれっ!! 暴食っ! 黒之顎【くろのあぎと】ッ!!!」 巨大な爪が身動きのできない(そもそも身体がないため動けないのだが)獲物を鷲掴みにすると、僅かな抵抗を感じつつも万力のように握り潰し、影魔爪【えいまそう】の中で爆発したコアは煙となって爪の隙間から漏れ、その姿をより凶悪なものに魅せる。 圧倒的な力で立ち尽くす獣王に僅かな動揺を感じながらも、足下に解放された人質に安堵の息を漏らした。 力を使い果たした闇王が分離すると同時に陽平にも凄まじい脱力感が襲いかかる。 巫女がいないことがこれほどのマイナスに繋がるとは予想外だった。 肩で大きく息を切らせながら、陽平は膝を突く闇王に歩み寄る。 「モウガ、大丈夫か?」 「この程度の疲労は心配ない。だが、早くボクを姫の下に…」 苦しそうに声を絞り出す闇王に陽平が首を傾げる。 「急げ! ボクの巫女はガーナ・オーダの将によって倒された。つまり、奴らはボクの忍器を持っているんだ!」 闇王の言葉に獣王にも驚愕が走る。 「いかん! 急ぐんだ陽平!!」 「わかったよ。待ってろ、すぐに翡翠連れて──」 連れてきてやるからな、と続けようとした瞬間、突然闇王が頭を抱えて苦しみだした。 「あああああああああっっ!!」 苦しむというよりも、半ば狂乱状態の闇王に陽平はおもわず息を呑む。 「まずい。闇王式甲糸【あんおうしきこうし】を介して、何者かが闇王の心を侵している!?」 「なんだって!?」 「急ぐんだ! 早く姫の持つ翡翠石を!!」 急かされながら陽平が踏みだそうとした瞬間、背中に強い衝撃がぶつかり、獣王が僅かによろめいた。 見れば、闇王がこちらに手を伸ばしたまま硬直しているではないか。 訝しげな視線でそれを見る陽平に、闇王は言葉を発することもなくゆらりと立ち上がる。 「ど、どうしちまったんだ…? 今の、モウガが俺たちを撃ったのかよ!?」 わけがわからないとわめく陽平に、闇王の肩に降りた影がクスリと笑う。 「察しが悪いね、獣王の忍び」 間違えようもない。それは先ほど闇王に細切りにされたはずの人物。蘭丸だった。 「な、てぇめぇ、生きてやかだったのかっ!?」 「簡単なこと。闇王に殺されたのは私じゃない…」 蘭丸はそう言うが、あのときバラバラにされたのは間違いなく彼だったはず。 まさか。陽平の視線が蘭丸の鈴に突き刺さる。 微かだが小さな音が鳴っている。まるで虫の羽が音を鳴らすかのように微かな振動を繰り返す鈴は、見ているだけで陽平の頭に激痛を奔らせる。 「くっ…!!」 「気付いたみたいだね」 鈴を魅せるように頭を振る蘭丸に、獣王がクロスショットを撃ち散らす。 巻き上がる砂埃は振動を遮り、機銃掃射の音が鈴の音をかき消したためなのか、頭痛は止み、目に映る全ての光景も正常≠ネものに戻る。 「あの鈴が幻を見せてたってのかよ…」 「そうらしい」 「じゃあさっきクロスフウガを吹っ飛ばしたのも…」 「実際は忍邪兵の攻撃かなにかだったのだろう」 なるほどと頷く陽平に、砂埃の合間から見える蘭丸の口元が妖しく笑う。 どこまでも人をからかったような笑みだ。 「さて、今日はこのまま去ることにするよ」 「なに!?」 背を向ける闇王に、獣王が僅かに踏み出── 「危ねぇッ!!」 とっさに後ろへ飛んだことが幸いした。一瞬、チカリと光ったのはやはり鋼糸だった。 獣王の立っていた場所には幾重もの筋が走り、糸が触れたものはすべて切り刻まれている。 指先だけでなく、背中にある蜘蛛の足からも伸びる斬糸。その死角はほとんど皆無と言っても過言ではない。 「では獣王。そしてシャドウフウガ。闇王は頂いていきます」 「まちやがれっ!!」 だが、伸ばした手は空を掴み、黒煙を吹き出しながら、瞬く間に消え失せる闇王に陽平は拳を震わせた。 「ちっくしょおおおおおっ!!!」 打ちつけた拳は大地を砕く。しかし、仲間一人の手を掴むことすらできなくて…。 胸を押しつぶすほどの無力感が込み上げてくる中、陽平は静かに涙した。 痛かった。闇王は助けを求めていたのになにもできなかったことが。そして、そんな仲間をみすみす敵に連れ去られてしまった情けなさが。 ほとんど原型をとどめない遊園地で、陽平の慟哭と、獣王の咆哮はいつまでも続いていた。 あれから、とても帰る気にはなれず、陽平は廃墟と化した遊園地に一人残っていた。 動かない観覧車の上で膝を抱え、月明かりを嫌うかのように顔を隠す。 罪のない人を殺し、仲間さえ救うことができなかった。 たとえどれだけ奇麗事を並べても、それが覆ることはない。 「なにをしておるのかと思えば…」 突然背後に現れた気配は、当たり前のように陽平の隣に立ち、きっと情けないなどと思いながら見下ろしているに違いない。 「いつまでそうしている気だ」 父・雅夫の言葉に陽平は無言で応える。 「やれやれ。悩みの尽きんやつめ」 ため息混じりの台詞に、陽平がようやく顔を上げる。 その目に、迷いの色はない。 「なぁ、信じていいンだよな。俺は、翡翠の忍者なんだって…」 「お前が信じようが信じまいが、彼女にとってお前が獣王の忍びであることに変わりはない」 見ろ、と雅夫の指さす先には、壊れた遊園地のゲートに寄りかかる少女の姿がある。 一瞬、見間違いかとも思ったが、あれは確かに翡翠の姿だ。 「あいつ…、光海たちと帰ったんじゃ…」 それも、もう何時間も前になる。 「動かんと…、お前と一緒に帰ると聞かなかったのでな」 雅夫の言葉が終わるより早く、陽平は影衣を纏って飛び降りた。 そんな息子の後ろ姿を見つめながら、どうやら杞憂だったな、と珍しく安堵の表情を浮かべる雅夫は、陽平が翡翠の下に到着したのを確認すると、その場から霞のように姿を消した。 「翡翠っ!」 息を切らせながら駆け寄る陽平に、膝を抱えていた翡翠が勢い良く立ち上がる。 「ようへい、もうだいじょうぶ?」 「あ、ああ…」 突然心配され、驚き混じりに頷くと、陽平は無言のまま翡翠の前に膝をつく。 「えっと……待たせちまったか?」 陽平の問いに、翡翠は小さく頭を振り、実に晴れやかな笑顔で陽平の首に抱きついた。 「だいじょうぶ。わたしも、今きた」 もちろん嘘だ。ずっとここにいたことは雅夫に聞いたし、たとえ夏でも夜風に冷えた手が全てを物語っている。 どこか、デートの定番のような台詞に苦笑しながらも、陽平は己の両腕で翡翠を包み込んだ。 (そうだ。俺は守るって誓ったんだ。この両手で、翡翠を守るって…) 「ようへい…」 名を呼び、体を離す翡翠に、陽平は穏やかな目で応える。 「なんだ?」 「うん。あのね、わたしようへいがすき」 そう言って翡翠の掌が陽平の両の頬に触れる。 「だいすき♪」 唇に重なる柔らかな感触に、陽平の思考は一瞬で吹き飛んでいく。 それから、どうやって帰宅したのかは覚えていないが、ひとつだけわかったことがある。 それは、自分が翡翠の忍びでありたいと願う気持ち。 誰がなんと言おうと、この気持ちにだけは嘘偽りはない。そう信じることができる。 彼女がそれを望み続けてくれる限り、彼女が自分を、好きでいてくれる限り。 |