それは一ヶ月ほど前の出来事であった。
 勇者忍者の新たな牙──竜王ヴァルフウガとの戦いに敗れた釧は、死の間際、黒衣の獣王カオスフウガの力によって難を逃れ、傷だらけの身体で見知らぬ場所に横たわっていた。
 意識を取り戻したはいいが、あれからどれくらい経ったのか、カオスフウガは、風雅陽平はどうしたのか、自分はなぜこんな場所にいるのか、どうにもわからないことだらけであった。
 傷つき、鉛のように重たい身体を引き摺りながらなんとか立ち上がると、周囲の様子を把握しようと歩いて回ることにした。
 まるで自分の身体ではないようだ。それほどまでにダメージを受け、体力的にも精神的にも消耗させられたらしく、釧は意に反する身体に舌打ちをする。
 よもやこれほどの力を秘めていようとは、竜王という新たな忍巨兵もそうだが、風雅陽平というあの少年に対しても相当に見誤っていたらしい。
 少し歩いてわかったことは、ここがどこか小さな湖沿いの森林であることと、あからさまなほどに強力な結界が張られた場所だということ。どうやら風雅縁の場所ということは間違いないらしい。
 もっとも、結界のために外へ出ることも適わず、かなり広範囲に渡って隔絶された空間になっているようだ。
 水辺で身体を休めながら、釧は瞳に焼き付いて離れない竜王の姿に苛立ちを露わにする。
 よもやこんなところでカオスフウガを失うことになるとは。半身を削り取られたような虚無感と友を失った痛みは、仮面に隠された過去を否応なしに疼かせる。
 だが、ここで歩みを止めるわけにはいかない。生きながらにして腐らせるために、カオスフウガは釧を逃したわけではないのだから。
 それから何度目の睡眠と覚醒を迎えただろうか。
 数えるのも億劫になった頃、夢うつつに鳴き声を聞いた気がした。
 いや、それは鳴き声などと生易しいものではなく、雄々しくも猛々しい獅子の咆哮。どこかカオスフウガに酷似した声に引き寄せられるように、釧は自然と声のする方へと歩いていた。
 これが野生の獣であれば、またしばらくは食に困らない。そんな打算的な考えもあったのだが、それよりも気になったのは、この咆哮がまるで釧を呼んでいるように聞こえることであった。
 全快とまではいかないものの、身体はいつもの動きを取り戻している。大丈夫だ、なにがあろうと切り抜ける自信はある。
 耳を頼りに歩くこと十数分。拓けたわけでもなく、またそれらしい場所であったわけではないにも関わらず、釧は自然と歩みを止めていた。
 ここに違いない。そんな確信めいたものを感じつつ、釧は輝きを失った獣王式フウガクナイを手にする。
(俺を導いたのはキサマか……)
 訝しむような視線で見下ろすクナイの柄尻。そこでは輝きを無くしたはずの勾玉が、黄金色に明滅を繰り返していた。
 この反応は忍巨兵か。しかし、それにしては奇妙な輝きを見せている。
 どうやらこれは、忍巨兵が釧を呼んでいるわけではないらしい。これはおそらく繋がりを失った勾玉を触媒に、なにかしら別の力が目を覚まそうとしているようだ。
 少し考えた後、釧は勾玉を地面に向けて自らの巫力を流し込む。
(カオスフウガが俺をここにやったというならば、これにはなにか意味があるはずだ)
 いったいどれほどそうしていただろうか。とっくに限界を越えていた釧はいつの間にか意識を失っていたらしく、立ち膝の姿勢で目を覚ます。
 無理もない。訓練を受けた巫女であっても巫力を際限なしに放出し続ければ命を落とす危険もあるという。
 フラつく頭を振りながら、周囲を見回してみるが、なにかが変わった形跡はない。変わったといえば、太陽は落ち、いつしか空が満天の星空になっていることくらい。
 やはり勘違いだったのか。そんな諦めにも似た感情のやり場がなく、釧は無造作にクナイを地面に突き立てる。
 ありったけの巫力を餌に釣り上げてやろうかと思ったが、どうやら一筋縄ではいかないらしい。
 諦めて別の手段を……。重たい身体に鞭を打ち、突き立てた獣王式フウガクナイを引き抜く。
 刹那、勾玉から溢れ出す黄金の輝きが足場を崩し……、いやそんな生易しいものではない。釧の立つ一帯を巻き込み大地を隆起させていく。
「これは……!?」
 どうやらこの場に封じられていた力は相当に危険なものらしい。
 中から出ようとする力と、内に押さえ付けようとする力が激しくせめぎ合い、幾重にも張り巡らされた風雅の封印が目視できるほどに浮かび上がる。
 これは眠らせるなどといったレベルではなく、厳重封印の措置が施されている。
 いったいなにが……。網の隙間から覗き見るように目を細める釧は、そこに見た姿に驚愕の表情をありありと浮かべる。
 幼い頃、数えるほどしか見たことのないものであったが、彼ら風雅の民にとっては守り神のようなもの。忘れるはずもない。
 紅の身体に走る黄色のラインはより躍動感を際立たせ、その巨体は見るもの全てを圧倒する。雄々しき者の名を冠する鬣は、まさしく真の獣王と呼ぶに相応しい猛々しさを持つ。
 月明りに照らし出されるその姿は黄金の獅子。
 そうだ。これこそが真の獣王。古のリードで発掘され、以降星を守り続けた獅子の王。言わば初代忍巨兵。
「クロスガイアッ!?」
 なぜこれが地球に。そんな釧の疑問を吹き飛ばすかのように、ついにクロスガイアは幾重もの封印を弾き飛ばした。
 自らを縛る鎖が消えたことに満足したのか、身震いするクロスガイアは釧の手にした獣王式フウガクナイを見つめると、そのまま固まってしまったかのようにピクリとも動かなくなった。
 獣王クロスとして生まれ変わった身体に意識や記憶を移植したことで、クロスガイアには自我というものは存在しないはずだが。
 ゆっくりと身体を沈め、服従しているかのように伏せるクロスガイアに、釧は徐に手を差し延べる。
「カオスフウガに代わり、この俺の牙になるというのか……」
 釧の問いにクロスガイアが答えることはない。だが、カオスフウガが釧を導き、クロスガイアがそれを望むというのなら、釧の取るべき行動は一つしかない。
「ならば来い、クロスガイア。俺と共に歩み、真の獣王として我が怨敵を食い散らせッ!」
 釧を背に立ち上るクロスガイアは、月光の降り注ぐ中で天をも貫く咆哮をあげる。
「まずは馴らしだ。あの風雅陽平にできて、俺にできぬはずがあるまい。クロスガイアッ!」
 手にした獣王式フウガクナイを振り上げ、漆黒の空を飛翔する。
「獣王変化ッ!」
 疾走するクロスガイアが跳躍と同時に変形を始める。
 前後両足を折り畳むように収納すると、獣足を収納したパーツを外側へ展開。180°開き切ったパーツは前後を回転させると人型の脚に変わる。
 背中のパーツが二つに割れ、外側に転がるように展開すれば、人型の腕へと変わる。
 獅子が俯くように顎を引き、顔の部分だけが胸に倒れれば、残った頭は猛々しい鬣を振り乱す人型の頭に変わる。
 胸の突起が角のように左右に開き、額の水晶に釧の身体を招き入れる。
「心転身之術ッ!」
 術によって広がる意識がクロスガイアと重なる瞬間、釧は一人の人間から獣王を名乗る忍巨兵へと変わる。
「真獣王式忍者合体……」
 頭部の鬣が炎を吹き、紅の忍巨兵を夜の闇に際立たせる。
「クロスガイアとの心転身……さしずめガイアフウガと言ったところか」
 融合して初めてわかったが、クロスガイアは他の忍巨兵と比べて遥かに重い。
 これはパワー型だとかそういう問題ではなく、単純に設計思想からして違うのだろう。
 正直、今のガイアフウガで風雅陽平の駆る竜王に勝てるとは思えない。今の釧はカオスフウガのときと比べて全身に錘をつけている状態になる。
(やはり慣れが必要か……)
 感触を確かめるように拳の開閉を繰り返す。
 この夜、釧は生まれ変わった。
 漆黒の獣王から真なる獣王へ……。それは、単純な姿形の変化ではなく、彼の心にも現れた小さな変化。
「もうなにひとつ奪わせるものか。真獣王の牙が、俺のすべてを守り抜く……!」






勇者忍伝クロスフウガ

巻之弐壱:「戦馬 - Day of twin general separation -」







 盾王の犠牲もありなんとかあの場を離脱することに成功した竜王。
 しかし、その心中穏やかでいられるほど陽平は割り切れた人間ではなかった。
 今の悲劇は回避できたはずなのだ。少なくとも、陽平が獣王の証──炎鬣之獣牙を抜くことができていれば最悪の事態にはならなかったはず。
(すまねぇ。俺が……、俺が未熟だったばっかりに!)
 強く噛んだ唇が裂け、血の味が口内に広がっていく。
 だが後悔ばかりはしていられない。盾王ガイガという犠牲を払った以上、なんとしても仲間たちの危機を救わねばならない。
 あの瑪瑙が危機を知らせてくるほどの事態。容易ならざる事態が起こっているのは間違いない。
 忍巨兵に通信機がないことが悔やまれる。前もって連絡手段を講じておくべきだったと今更ながらに後悔する。
「とにかく今は、あいつらの力とヴァルフウガのスピードを信じるしかねぇ。頼むぜっ!」
 掌に拳を打ちつけ、両腕の遁煌で竜巻を生み出すと、それすらも推進力に変えて竜王が空を翔ける。
 後悔だって反省だって後からいくらだってできる。今すべきことは、なんとして仲間たちの危機を救うことだ。
「もうちょっとでいい。無事でいてくれっ!」
 早くだ。とにかく、少しでも早く仲間たちの下へ行かねばならない。
 意図的に両手足の遁煌で炎を生み出し、フウガパニッシャーの要領で、あくまで内側へ内側へと力を押し込めて行く。
 聞いただけの力に頼ることに不安はあったが、手段など既に選んでいる余裕はなかった。
 暴走した力を身に纏う蒼天の竜王──即ち暴竜。
 その姿を自らの意思で呼び起こすことで、陽平は更なるスピードアップを図る。
 翼の先端から炎が噴き出し、両肩の竜が口を開く。
 自らに内包した熱量に装甲が赤く変色した瞬間、暴竜は先ほどと比べ物にならない速度で雲を貫いた。






 時非からは遠い出雲の地。風雅の里にいた風魔の兄妹にも、天城瑪瑙の笛は届いていた。
 琥珀たっての希望もあって援軍として時非を目指す柊と楓であったが、なにやら時非の二箇所で不穏な空気が流れているのを肌で感じ取り、つい先ほど二手に別れたところであった。
 時非の一部になにか妙な力の流れがある。その正体を確かめるべく一人走り回った柊であったが、自身が目にした光景に声をあげることさえ適わず、驚きのあまり思わず何度も両の目を擦る。
 見覚えのある巨躯が一瞬で細切れにされ、その破片が砂のように崩れ落ちていく。
 見間違えるはずがない。今のは鎧の双武将ガイ・ヴァルト。柊が牙王と共に打ち倒したはずのガーナ・オーダだ。
 だが、それ以上に目を引いたのはもう一人の存在。
 いくら一度倒している相手とはいえ、苦戦の末に柊が討ち果たした相手を、あろうことかその人物は息を切らせることなく斬り捨てたのだ。
(誰だ……誰が戦ってるんだ!?)
 気配を悟られぬように離れた位置で息を殺す柊は、風に飛ばされていくヴァルトの灰を見送ると再び戦っていた相手に視線を移した。
「……ありゃ!?」
 いない。戦っていたはずの人影がない。目を離したのはほんの一瞬のはずだ。まさかその間に身を隠したのか。それはつまり、こちらが見ていることに気づいているということになる。
 しかし、そんなバカなと身を乗り出す柊は、そっと首筋に当たる冷たい感触に目を大きく見開いた。
 刃が首に添えられている。つまり相手はそれだけ近くに、少なくとも背後数メートルには存在しているはずなのにまるで気配が感じられない。希薄というわけでもなく、完全にそこにはなにもないと柊の感覚が認識しているのだ。
(殺されるッ!?)
 背中を流れる冷汗の感触にゾクリと震え、死をとても身近に感じた。恐ろしいと感じたクノイチの姉、椿。そんな椿と対峙したときさえもこんなに死を感じたことはなかった。そうだ。こんなことは父、冬眞と刃を交えたとき以来だ。
 しかし、いつまで待とうとも刃が引かれることはなく、おそるおそる振り返った柊はそこに立つ者の姿に言葉を失った。
「驚かせてしまったね。ワシらを観察する視線を感じたものだからつい……な」
 そう言って笑いながら刃を納めたのは言わずと知れた風雅陽平の父。風雅唯一のマスター級忍者であり、風雅の当主、琥珀を守る忍者。風雅雅夫であった。
 それにしたって、ついで殺されては堪らない。へなへなと肩を落としながら溜め息を漏らす柊は、雅夫の視線を追うようにして戦場だった場所を振り返る。
 目測になるが、こことの距離はざっと百メートル未満。更に今柊たちのいる場所がマンションの屋根であることを考慮すれば、百メートル強は離れていることになる。
 雅夫はいったいどうやってその距離を縮めたというのだろうか。
 視線から柊の疑問を悟ったのか、怪しげな笑いを浮かべる雅夫は腕を組むと豪快に笑ってみせる。
「ハッハッハ。風雅流の縮地はお気に召したようだ。なんなら学んでみるかね?」
「ほ、ホントっ!? オイラやるよ! ……じゃなかった。どうかよろしくお願いしますっ!」
 唐突な申し出に興奮を抑えられず、捲し立てるように雅夫に食ってかかる。
「いいだろう。しかし、どうやら先に片付けねばならない事態が起こっているらしい」
 急に真面目な顔つきで時非海岸の方を振り返る雅夫に、柊はそうだったと自身の額をはたいてみせる。
 なにやら小さな影が宙を舞っているように見える。よくは見えないが、どうやらガーナ・オーダの邪装兵、または忍邪兵の類いなのだろう。
「翡翠姫が奴等の手に落ちた。お前は急ぎ仲間たちに合流し、なんとしても翡翠姫を救出するのだ」
 雅夫の言葉に姿勢を正し、膝と拳をつきながら頭を垂れる。
「はっ。一命に代えましても!」
『柊、俺を使えッ! 赤ももう出てやがるッ!』
 左手につけられた腕輪から聞こえる相棒の声に力強く頷き、柊は忍器を発動させる。
 途端に腕輪は足当てに変化すると、柊に新たな忍び装束を与える。
「風雅流ッ忍巨兵之術ッ!」
 裂けた大地から吹き出す風が、青い戦士の牙を呼ぶ。
「いくよロウガっ! まずはワルモノ退治だッ!」
「オウヨっ!」






 時非海岸上空にいち早く到着していた風魔の次女と鳳王は、厄介極まりない状況に軽く舌打ちしていた。
 先行していた光海と孔雀の忍巨兵、森王と輝王が奮戦するのに混じり、初めて見る忍巨兵が戦っている。
 それが天王だということはすぐに気がついたのだが、どうにも連携が取れていない。否、あれは取れていないのではなく、天王が好き勝手に動いているだけだ。あれでは各忍巨兵の特性を活かすことなどできようはずがない。
「光海先輩、これはどういう状況ですか?」
 そう尋ねたくなる楓の気持ちもわからなくはない。
 森王に寄り添うように舞い降りる鳳王に、光海はわけがわからないと頭を振るのだった。
「私がわかってるのはアレに翡翠ちゃんが囚われていることと、鎧の双武将が生きてたってこと」
 どうりで見覚えのある武器と動き。輝王と天王を相手にまったく退けをとらない邪装兵──鎧巨兵が、ガイ・レヴィトと重なって見える。
「椿さんの話だと、あれが双武将の本体だって……ッ!?」
 光海の言葉を遮るように二人の間を切り裂く刃に、森王と鳳王が互いを突き飛ばすように左右へ飛ぶ。
「やぁ〜……っと来てくれたな。待っとったで、ウチの小鳥ちゃん!」
 両腕の甲から伸びる連結刃が鳳王だったものを切り裂いていく。
 レヴィトには、それが分身であることなど百も承知しているはず。それでも敢えて切り裂いたのは、ひとえに楓に対する執着心の表れなのだろう。
「私は顔も見たくありませんでしたけどね」
「幸せを呼ぶのは青い鳥。赤い鳥に手を出せば火傷ではすみません」
 ガイ・レヴィトの連結刃に対して、鳳王の凰連鎖が伸びる。
 毒舌を浴びせられているというにも関わらず嬉しそうに舌なめずりするレヴィトに、楓はやれやれと溜め息混じりに頭を振った。
 とにかく早急に翡翠を取り返さねばならない。鳳王のショットクナイと森王の矢が直撃しているにも関わらず、ヒビどころか傷一つ入らない装甲。これをどうにかして突破しなければ勝利はない。
(でも、竜王がなければ天翼扇は使えない)
 それ以前に天王が力を貸してくれるのかも定かではない。
「光海先輩、天城瑪瑙さんに協力は取り次げなかったんですか!?」
 悲鳴にも似た楓の問いに、光海は自分も尋ねたかったとばかりに椿たち三人を振り返る。
 協力の二文字に瑪瑙の表情が強張る。彼女自身悩んでいるのがありありと浮かんでいる。
 剣を振っていたレヴィトとは違い、鎧巨兵ガイ・レヴィトの連結刃は二振り。その変則的な攻撃も更に不規則になり、視覚的には倍以上に増えて見える。
 高速で交差させた二枚のコインが三枚に見えるのとはわけが違うが、ようするに残像が視界を覆うように広がっているのはわかる。
 なんとかあの武器を封じるしかない。
 楓の姉、椿は連結刃を鋼糸で絡めとるという神業でこの武器を封じたが、正直なところ楓にそこまでの技量はなく、尚且つ二振りになった連結刃にそれが通じるかは怪しいところだ。
『楓、ボクを召喚してほしい』
「闇王っ!?」
 右手の手甲に嵌め込まれたもう一つの勾玉から聞こえる声は、楓と契約を交わしたもう一人の忍巨兵のものだ。
『この相手には手数が必要だよ。ボクも戦う……』
「わかりました。いきます! 風雅流忍巨兵之術っ!」
 黒色に輝く勾玉の力を解き放つと、突如なにもない空間に蜘蛛の巣が広がっていく。
 絵の具が滲むように蜘蛛の巣に浮き出た巨大な女郎蜘蛛は、自らを糸で包むと繭を破りながら人型に変わって飛び出していく。
「闇王モウガ、参戦するよ」
 派手に登場をキメる闇王。続けてその頭上を颯爽と飛び越えていくのは風魔の青い牙。
「おっまたせ! 牙王ロウガも到着だいっ!」
「よぉし! 噛み付かれたいヤツから前に出ろ!」
 ナイスタイミングとばかりに現れた牙王に、鳳王が赤い光になって飛び込んでいく。
「「風雅流ッ表裏一体ッ!」」
 混じり合う青と赤。それは一瞬にして新たな忍巨兵へと姿を変える。
「「双王式忍者合体ッ!」」「「ラグナッフウガァァッ!」」
 炎と風を巻き起こし、着地と同時に大地を隆起させる。
 ようやく現れた双王の姿に満足したのか、興奮を現す獣の尾のようにガイ・レヴィトの連結刃が更に速度を増していく。
「鎧巨兵ガイ・レヴィト。一度は獣王を破ったというその実力、見せてもらいますっ!」
 翼を広げて舞い上る双王は、連結刃の嵐を潜り抜けるよう器用に飛ぶと、両腕の獣爪を素早く走らせた。












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